未登記・確認済証なし・図面なしから適合証明の発行まで|群馬県の事例
結論からいうと、建物が未登記で、確認済証・検査済証・設計図面が見つからない場合でも、販売時の資料や写真を代替資料として、建築士による適合証明の作成を書類ベースで進められることがあります。
今回の群馬県内の事例では、現地調査を行わずに書類と写真で確認を進め、建築士による適合証明書の発行と依頼者への引き渡しが完了しました(2026年8月確認)。
ただし、書類ベースで進められるかどうかは建物ごとに異なり、本件でも建築士の精査の結果、建物本体の基礎を確認するための追加写真が必要になりました。
また、適合証明書の発行は旅館業許可の取得を意味するものではありません。本記事は旅館業許可の取得を主張・保証するものではなく、他の案件で同じ結果になることを約束するものでもありません。
この事例の要点
| 項目 | 本事例の状況 |
|---|---|
| 地域 | 群馬県内(プライバシー保護のため市区町村は記載しません) |
| 建物 | 戸建て(独立建物)・旅館業への転用予定 |
| 既存用途 | 住宅(購入物件) |
| 建物登記 | 未登記 |
| 確認済証・検査済証 | 確認できず |
| 設計図面 | 確認できず |
| 代替資料 | 販売時資料、建築時期の手がかりとなる資料、内観・外観写真 |
| 現地調査 | 実施せず(書類+追加写真による机上確認) |
| 自治体様式 | 群馬県が公表する指定様式を前提に作成 |
| 適合証明書 | 発行済み・引き渡し完了(2026年8月確認) |
| 旅館業許可 | 別の手続き(本記事では取得を主張しません) |
| 建物表題登記 | 別途進める予定(完了は未確認) |
ご相談時の状況
今回ご相談いただいたのは、群馬県内で購入された戸建て(住宅)を、旅館業向けの宿泊施設に転用したいという案件です。
旅館業許可に向けて建築士による適合証明が必要になった一方で、確認済証・検査済証・設計図面が確認できず、建物は未登記であったため、通常の書類確認の出発点となる資料がほとんどない状態でした。
依頼者のご希望は次のとおりでした。
- **「改修工事が必要になる場合は発行を希望しない。現状のままで発行可能であれば進めたい」**という明確な意向
- 群馬県が公表する指定様式での作成
- 建物の登記(未登記の解消)は別途進める予定
この「現状のまま」という意向が、建築士が初期に確認する範囲を左右しました。金銭条件は本記事では公開しません。
揃っていた資料・不足していた資料
揃っていた資料
- 販売時資料
- 建物の外観写真・各室の内観写真
- 築年(築年数)の手がかりとなる資料・写真一式(建築士へ送付済み)
不足していた資料
- 確認済証
- 検査済証
- 確認申請図書・各種図面
- 登記関係書類(未登記のため)
- 改修履歴(不明)
検査済証なし・図面なし・改修履歴不明は、いずれも建築士の確認範囲に影響する大きな欠落です。
未登記でも建築士による確認を始められるのか
建築士はまず、販売時資料と内観・外観写真をもとに、図面のない未登記建物について現状のまま(無改修で)適合証明の作成が可能かという論点に重点を置いて確認しました。
本件では、未登記であること自体は適合確認・適合証明の書類作成を直ちに妨げるものではなく、登記と建築基準法適合の確認は別々の手続きである、という整理が示されました。
写真の精査では、建物正面側のデッキがコンクリートの束(束基礎)で支えられていることが確認され、建物本体の基礎の状態が論点として残りました。この論点への対応は後述します。
適合証明と建物登記は別の手続き
本件では建物が未登記であるため、建築士による適合確認とは別に、建物登記(建物表題登記)についても整理が必要でした。
| 項目 | 建築士による適合証明 | 建物登記 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 建築基準関係規定への適合状況の確認 | 建物情報を法務局へ登録 |
| 主な専門家 | 建築士 | 土地家屋調査士 |
| 旅館業との関係 | 保健所等から提出を求められることがある | 登記事項証明書等を求められることがある |
| 他方の代わりになるか | ならない | ならない |
未登記の解消(建物表題登記)は土地家屋調査士の領域であり、建築士による適合確認とは別の手続きとして並行して進める整理です。適合証明が登記の代わりになることも、その逆もありません。
詳しくは、関連記事「未登記建物でも旅館業の建築士による適合証明は相談できる?建物登記との違い」で解説しています。
群馬県指定様式の確認
建築士による証明書は、全国で完全に同じ書式が使用されるとは限りません。
本件では、依頼者から群馬県が公表する適合確認関係の指定様式での作成希望があり、その様式を前提に書面が作成されました。証明書の様式・添付資料は自治体により異なる場合があるため、他県で使用した証明書をそのまま別の県の申請へ使用できるとは限りません。
なお、検査済証が見当たらない建物の法適合状況を確認する一般的な枠組みとしては、国の「既存建築物の現況調査ガイドライン」に基づく現況調査報告書の作成があります。ただし自治体・審査機関により取り扱いが異なる場合があり、本件で実際に用いた書面は群馬県の指定様式を前提に検討・作成されました。
なぜ基礎の追加写真が必要になったのか
建築士から追加で依頼された資料は次の2点です。
- 建物裏側の基礎まわりの写真(建物裏側の全体写真+地面と建物の接点・基礎部分の近接写真)
- 築年(築年数)がわかる書類・建物の外観写真・内観写真(送付済み)
本件の中核となる学びは、追加資料の「理由」にあります。以下はいずれも本件の観察であり、すべての案件に当てはまる一般則ではありません。
(a) 建物裏側の基礎写真 — 構造的理由。 正面側のデッキがコンクリートの束(束基礎)で支えられていることは受領済みの写真で確認できていました。しかし、束基礎がデッキ部分だけに使われているのか、建物本体の基礎も同様の構造なのかで、建築士の対応可否が変わります。デッキは建物に付属する部分であり、建物本体の基礎とは分けて判断できる可能性がある一方、本体も同様の状態であれば基礎・構造の確認に影響しうるためです。この切り分けのために、裏側の全体写真と、地面と建物の接点・基礎部分の近接写真が必要とされました。
(b) 築年書類・内観外観写真 — 証拠的理由。 図面のない未登記建物では、確認済証・検査済証・確認申請図書という通常の出発点がありません。そこで、販売時資料と写真を代替資料として、建物の建築時期・規模・現況を把握し、「現状のまま適合証明の作成が可能か」を具体的に判断する材料としました。本件では、これらの代替資料により書類ベースの確認を始めることができましたが、代替資料で足りるかどうかは建物ごとの判断です。
どのような進め方を選んだのか
- 初期ルート: 現地調査を行わない書類ベースの確認
- 修正ルート: 建物裏側の基礎写真の追加要請
- 最終ルート: 提携建築士による机上(遠隔)確認
遠隔での確認は「追加資料があれば可能」と判断され、机上確認を維持したまま、追加写真で論点を精査する進め方が採られました。
現地調査を初期段階で選ばなかった理由: 販売時資料と内観・外観写真で建物の概要を把握でき、残る論点(建物本体の基礎)は特定の箇所の追加写真で確認できると判断されたためです。本件の記録上、現地調査は必須とされていません。ただし、精査の過程で追加資料が必要になる可能性は当初から案内されていました。
地元建築士への引き継ぎを選ばなかった理由: 本件は書類+追加写真で机上確認が成立する見込みであり、地元専門家の関与が必須となる要素は記録上確認されていないためです。
なお、現地調査と現況復元図が必要になった対照的な事例として、宮城県の図面なし物件の事例があります。どちらのルートになるかは、残っている資料と建物の状況によって案件ごとに異なります。
ご相談内容を確認
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現在ある資料を整理
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建築士による初期的な対応可否の確認
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販売資料・築年数資料・内観外観写真を受領
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未登記建物のため、建物登記との切り分けを整理
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群馬県指定様式を確認
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建築士が資料・写真を精査
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建物本体の基礎について追加写真を依頼
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建築士による書面の作成・確認
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適合証明書の発行・依頼者への引き渡し(2026年8月確認)
発行までの経過と現在の状況
2026年7月の時点では、建築士による書面の作成・確認が完了した旨の関係者報告はあったものの、発行済み書面の引き渡しまでは確認できていませんでした。
その後、2026年8月1日に、適合証明書の発行と依頼者への引き渡しが完了したことを確認しました。
本件で確定しているのは、次の点までです。
- 未登記・確認済証なし・図面なしの建物について、現地調査を行わない書類ベースの確認(追加写真の要請を含む)で進めたこと
- 群馬県の指定様式を前提に書面が作成されたこと
- 建築士による適合証明書が発行され、依頼者へ引き渡されたこと(2026年8月確認)
一方で、旅館業許可の取得は別の手続きであり、本記事では主張しません。 許可手続きの帰趨や建物表題登記の完了など、確定していない事項は「残る不確実性・今後」に記載します。
この事例から分かったこと
いずれも本件の観察であり、全国一律の断定ではありません。
- 未登記・図面なしの建物でも、販売時資料や写真を代替資料として、書類ベースで建築基準法適合の確認・適合証明の作成を検討できる場合がある(必ず可能というものではない)。
- 登記(未登記の解消)と建築基準法適合の確認は別々のワークストリームであり、旅館業許可に向けては並行して進める必要がある。
- 建築士は、デッキの束基礎と建物本体の基礎を区別するために、建物裏側の基礎写真を求めることがある。
- 「現状のままでの発行を希望し、改修は望まない」という依頼者の意向が、初期に確認する範囲を左右する。
同じような状況で準備したい資料チェックリスト
同じような状況(未登記・図面なし)の方が事前に確認・準備できる項目です。揃っていなくても相談は可能で、揃えれば発行が約束されるものでもありません。
- 販売時・売買時の物件資料
- 建築時期(築年)を推測できる資料
- 建物全体の外観写真・各室の内観写真
- 建物の周囲と基礎まわりの写真(本体の基礎と、デッキ等の付属部分の区別が分かるもの)
- 登記の状況(未登記か、建物表題登記が済んでいるか)
- 増築・改修の履歴に関する情報
- 申請先の自治体・保健所が指定する様式の有無
- 保健所・建築担当部署との相談記録
残る不確実性・今後
適合証明書の発行・引き渡しは完了しましたが、本記事の最終確認日(2026年8月1日)時点で、次の点は確定していません。
- 建物本体の基礎確認の経緯 — 追加写真による確認がどのように行われたかは、公開記録の範囲では確認できていません(証明書の発行・引き渡し自体は確認済みです)。
- 未登記の解消(建物表題登記)の完了 — 土地家屋調査士の領域として、別途進める整理です。
- 旅館業許可の手続きの帰趨 — 適合証明書の発行は許可の取得を意味しません。本記事は旅館業許可の取得を主張・保証しません。
- 建物の構造・築年帯・床面積帯・都市計画区域/防火地域の別 — 公開記録の範囲では確認中です。
よくある質問
未登記でも旅館業許可に向けた建築士の確認を相談できますか?
相談を開始できる場合があります。
本件では、書類と写真による確認から建築士による適合証明書の発行・引き渡しに至りました。ただし、未登記であることとは別に、建築時期、構造、規模、現在の状態、増改築などを確認できる資料が必要です。
確認済証・検査済証・図面がすべてなくても対応できますか?
案件によります。
販売資料、固定資産関係資料、写真、現在の間取り図などで初期確認を始められる場合がありますが、現況図作成や現地調査が必要になることもあります。
販売資料と写真だけで必ず証明できますか?
必ずではありません。
今回の事例でも、受領した写真を精査した結果、建物本体の基礎を確認するための追加写真が必要になりました。本件では最終的に適合証明書の発行・引き渡しに至りましたが、すべての案件で同様に進められるとは限りません。
群馬県指定の様式に対応できますか?
様式の内容と、建築士が確認できる範囲を確認した上で、対応可能性を判断します。
指定様式がある場合でも、必要な根拠資料が不足していれば、追加資料や現地調査が必要になることがあります。
基礎写真はどこを撮ればよいですか?
建物全体と地面の接続関係、建物本体の基礎、デッキ等の付属部分との区別が分かるように撮影します。
建築士が確認したい箇所は案件によって異なるため、建築士から指定された角度・箇所を撮影することが重要です。
関連記事
ご相談について
未登記・図面なしといった条件でも、現在ある資料からどこまで確認できるか、追加資料・登記・現地調査などの整理が必要かを、状況に応じて一緒に整理します。まずは無料診断でご相談ください。証明書の発行や旅館業許可の取得をお約束するものではありません。
免責
本記事は一般的な情報提供を目的とした、匿名化済みの事例紹介です。建築基準法・旅館業法その他の適用や必要な手続きは、建物の状況および所管の自治体・保健所・特定行政庁により異なります。記載は作成時点の一般的な理解に基づくもので、特定の結果(適合証明の発行や旅館業許可の取得)を保証するものではありません。実際の対応は、必ず個別に建築士および所管窓口へご確認ください。
本記事は実際の相談内容を匿名化し、個人・法人・施設を特定できない形に再構成しています。
最終確認日:2026年8月1日
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